第9章 禁止事項・留意事項

1.禁止事項

 審神者は国家公務員の中でも最も機密情報の多い職種である。そもそも審神者は軍人であり、審神者が接する情報は全て軍事機密であるといっても過言ではない。

 守秘義務については今更言うまでもないことであり、ここでは『職務上知り得た情報を関係のない者に明かさない』という最低条件は理解しているものとして、その他の禁止事項について述べる。

時間遡行の禁止

 本丸の時間遡行装置は基本的に審神者は通過できないとされている。但し、物理的には可能である。しかしながら、人間である審神者が通過することによって生じる可能性のある以下の懸念のため、政府は審神者の時間遡行を禁じている。

  • 『その時代に存在しない人間』である審神者が過去に赴き当時の人間と接してしまうことによる歴史改変。意図しておらずとも時代が違えば言葉も違い常識も違う。そのことにより、当時の人間であれば知ることのない知識を得てしまい、それが時代を経ることによって少しずつズレが大きくなり、歴史に影響を及ぼす可能性がある。
  • 『その時代に存在しない人間』である審神者を当時の人間が見てしまうことによる歴史改変。審神者側は自分が当時の人間に見られていることに気づかないことから、当時の人間が知らぬアイテムを使う可能性もあり、それらを見られた場合、長期的に見てズレが生じ、歴史に影響を及ぼす可能性がある。
  • 審神者が過去に赴くことによって現代では根絶している病原体やウィルスを現代に持ち込んでしまう可能性。既に現代において根絶している病原体・ウィルスであれば、治療薬もデータもない可能性が高く、過去に比べ医療が発達したため生物学的な生命力が過去の人間に比べて著しく劣っている現代人に感染するとそれが死病になる可能性が高い。しかも過去に渡った審神者のみの問題ではなく、担当官や演練・万屋を通して感染拡大・パンデミックを引き起こす可能性もある。
  • 審神者が過去に赴くことによって当時そこにはなかった病原体やウィルスを持ち込んでしまう可能性。現代人である審神者は予防接種などで保菌者であっても発病していないケースもある。しかしながら現在戦場となっている時代には予防接種の概念はなく、当然感染すれば発病する。当時にない病であれば、治療方法もなく、感染拡大しそれが歴史を変えてしまう可能性が高い。
  • 審神者が過去に赴き戦うことによって、当時には有り得ない銃火器・光子線銃・術式などの痕跡が戦場に残り、それがオーパーツとなってしまう可能性がある。なお、人間が開発した武器は時間遡行軍にも検非違使にも効かないことが判明している。飽くまでもこれらの敵は『刀剣男士が振るう本体』で斬ることにより『刀剣男士の霊力』によって浄化されているのであって、直接の『斬る』行為によって消滅しているわけではない。※このため、刀剣男士が自身の本体以外で攻撃しても霊力は乗らず、遡行軍・検非違使を倒すことは出来ない。

許可のない現世への外出

 飽くまでも禁止しているのは『無許可』の外出である。担当官もしくはこんのすけを通して許可を得れば問題なく外出は可能である。

 但し、審神者及び現世の一般人の安全のため、極力無用の外出は控えてもらいたい。審神者は歴史修正主義者のテロの対象であり、審神者と知れれば命を狙われる可能性が高い。審神者個人が狙われ襲われるのであれば、それは危険回避の安全対策を怠った審神者の自己責任であるが、歴史修正主義者は基本的に周囲を巻き込むテロを起こす。つまり、審神者一人を殺すために、無関係の無辜の国民を巻き込むのである。

 よって、政府としては審神者には冠婚葬祭であっても現世への外出は控えてもらいたいのが本音である。なお、このことから、3親等以内の親族であれば、申請することによって最低でも年に3回の城下町での面会が許されている。

刀剣男士の売買

 仮にも刀剣男士は神の分霊である。それを己の欲望のために売買するなどあってはならないことである。なお、忘れがちではあるが、刀剣は審神者の私有財産ではなく、国有財産である。よって、審神者が刀剣を売買することは国有財産の横領にもあたる。

刀剣男士の譲渡

 正確には政府を通さない譲渡を禁止している。歴保省での書類上の手続きと宮内庁神祇局陰陽部での契約変更術式を施す必要がある。これを行なわないと契約の更新が正しく行われないため、不具合を起こす可能性が高い。顕現前であっても同様。必ず刀剣男士の譲渡は政府を介して行なうこと。なお、霊力の関係で特定刀種が入手できない、襲撃後の戦力不足解消などの理由以外(難民、容姿の好み云々)での譲渡は認められていない。

刀剣男士の虐待

 刀剣男士に利己的な理由での暴力を振るうことは禁じられている。この『暴力』は腕力によるものだけではなく、言葉による暴力、性的な暴力も含まれる。これは一般社会の職場に置き換えれば言われるまでもないことである。パワハラ・モラハラ・セクハラが禁止なのは一般社会では当たり前のことである。

 本丸内は閉鎖空間であり、審神者が刀剣男士の主であることから、理性の箍が緩み、ストレスを刀剣男士への虐待で晴らす愚か者がいることは嘆かわしいことではあるが、万一そのような傾向が己にあると思えば、守宮記念病院にてカウンセリングを受けることを推奨する。

刀剣男士との性交渉

 審神者が己の欲望を満たすため、或いは性欲を持つに至った亜種刀剣男士の欲望を満たすための審神者と刀剣男士の性交は固く禁ずる。一つには人外の刀剣男士と性的接触をすることで、審神者の霊力に澱みが生まれる、審神者の霊力が刀剣男士に奪われる、審神者が人外へと変貌するなどの懸念があるためである。

 なお、神事としての性交渉という方法もあるが、これも推奨はされていない。日本国の古来の神道には性交渉による神事はない。飽くまでも亜流であり、仮令神事であれ、実際には神格を持たない刀剣男士に神事を行なったとしても効果はない。

2.留意事項

刀剣男士の食事

 刀剣男士は食事をしなくとも破壊されることはない。しかしながら、食事により霊力の補完を行なっていること、肉体を得たことによる生理的欲求もあるため、人間と同じく1日3回の食事を摂ることが推奨されている。また、刀剣男士の食事は、刀剣男士(分霊)を通しての本霊への供物の意味合いもある。

 但し、刀剣男士の中には審神者の霊力との関係か、食事を必要としない(忌避する)ケースも散見される。その場合は無理に食事をさせる必要はない。そのような刀剣男士に無理やり食事をさせるのも虐待となる。

刀剣男士の性欲

 本来、器物の付喪神である刀剣男士に性欲はない。しかしながら、現世の創作物による影響か、審神者の中には刀剣男士にそれがあるものと(意識的であれ無意識であれ)信じている者もいる。そういった審神者が増えたことによって、刀剣男士の一部に顕現当初から性欲を持つ者、顕現後一定期間を過ぎたころから芽生える者もある。そのため、城下町歓楽街に刀剣男士専用の遊郭も設置してある。そこの遊女はかつての吉原・島原の花魁たちの持ち物の付喪神である。

 なお、審神者と刀剣男士が性交することは固く禁ずる。理由は1項禁止事項にて述べている通りである。