1.歴史修正主義者
歴史学における立場を示す用語であった『歴史修正主義』であるが、『客観的な歴史学の成果により確立した事実全体を無視し、過去の出来事を都合よく誇張・捏造・解釈して”歴史”として主張したり、都合の悪い過去は過小評価や抹消したりして、自らのイデオロギーに従うように過去の記述を修正する』という行動が資料や論文に留まらず、時間遡行装置の開発により、歴史そのものを都合よく書き換えようとする、まさに『歴史修正主義者』が現れた。
これら行動を起こした者たちは自らを『正統歴史守護軍』と称しているが、紛れもないテロリストである。様々な時代にNPOや市民団体を装って存在しており、30世紀に本拠を置く者たちが現在判明している最も遠い未来のテロリストである。これらは現世でテロ活動を行なったり、政府や関係機関にスパイとして潜入していた者を捕えた結果判明している。
つまり、30世紀からテロリストが来ているということは少なくとも現在の正史は30世紀までは守られているということになる。同時に30世紀まではこの戦いが終わっていないということでもある。少なくともあと600年はこの戦いは終わらないということにもなり、この戦争は最早恒久的なものといっても過言ではないかもしれない。しかし、途中で投げ出すことは人類の滅亡を意味する。我々正史を守る者が諦めれば、今現在生きている人間は消えてしまう可能性が高いのである。よって、我々日本国政府は決して諦めることなく、この戦いを継続するものである。
過去を改変しようとする歴史修正主義者の始まりは、肉親や愛する者の死を回避したいという切なる願いや、失敗をなかったことにしたいという誰しもがふと持ってしまう思いから発しているものと思われる。そのため、当初の歴史修正主義者の行動は特にイデオロギーに関わりなく、数日を遡っての修正が主であったらしい。しかし、やがてそれらの過去改変に気づいたテロリストが日本国或いは世界の『現在の歴史』を否定し改変するために時間遡行装置を利用し始め、それが現在のテロリスト『歴史修正主義者』となった。
- 正統歴史守護軍(自称)
- 歴史修正主義者の組織。しかしながら、内部はいくつにも分かれており、共通する『現在の正史を否定する』という一点においてのみで繋がっているものと思われる。そのため、同時代において織田信長を桶狭間で殺そうとする者と本能寺で救おうとする者など、真逆の行動を取るという事象が起こっている。
首謀者・組織構成などは一切不明であるが、国粋主義者・愛国者もいれば、反日主義者もおり、一枚岩ではないことが窺われる。また、世界で最も古い統一国家である日本の歴史を変えることで自国の歴史に影響を与えようとする海外の歴史修正主義者も存在する。正直、自分の国だけで活動してほしいものである。 - 召喚師(自称)
- 『正統歴史守護軍』の実践指揮官で、政府でいうところの審神者に該当する者のことを示す。幹部と同じ思想を持つ者が主流ではあるが、任官しなかった(或いは出来なかった)審神者資質のある人間で構成されているものと思われる。但し、全てが自らの意思により歴史修正主義者となったわけではなく、誘拐や拉致によって強制的にならされた者も少なくない。これまでに政府に助けを求めた召喚師もおり、彼らは我々に貴重な情報を提供してくれている。
なお、彼らの情報から判明したことであるが、一時期現世のマスコミやインターネットを騒がせた『政府に誘拐・拉致され、家族を脅迫材料にされた審神者』は彼らのことである。歴史修正主義者は誘拐した人々を『審神者』であり『刀剣男士を率い歴史修正主義者と戦っている』と思い込ませていた。しかしながら、一般に公開されている情報との齟齬(主に刀剣男士の実装状況や刀剣男士の容姿)から不信感を抱き、我々に助けを求めたのである。彼らの救助にご協力いただいた審神者には感謝し申し上げる。 - 時間遡行軍
- 歴史修正主義者の召喚師に使役される刀剣の怨霊。刀剣男士と違い付喪神ではないことが判明している。しかし、刀剣そのものの怨霊ではなく、戦場で折れた刀剣に名もなき兵士の怨嗟や怨念、生への執着といった念が宿ったものが多い。そのためか、刀種ごとにその外見は共通している。負の念が凝縮されたものであるため、穢れをまとっており、刀剣男士が『神である本体』で斬ることによって浄化がなされている。なお、戦場で時間遡行軍と切り結ぶことによって刀剣男士にも穢れが移るが、それは本丸のシステムにより浄化されているので、心配は無用である。
2.検非違使
本来の検非違使は平安時代の令外官であり、京都の治安維持と民政を所管した役職のことである。
歴史保全戦争初期、2208年にその存在が確認されているが、未だ正体は不明のままである。歴史修正主義者のみならず刀剣男士の部隊をも敵と認識していることから、本来その時空にいないはずのものを排除するためだけの存在ではないかとされている。また、外見は時間遡行軍と似た部分が多く、歴史修正主義者の手から離れた時間遡行軍である可能性も否定できない。
検非違使出現当初、時の天皇陛下、伊勢神宮祭主、伊勢斎宮が宣託を賜るよう願い、天照坐皇大御神よりご返答をいただいたが、少なくとも当時の神々はこの存在に関知していないとのことであった。宮内庁神祇局の見解としては『異物を排除する歴史の修正力』が具現化してものではないかとのことで、天照坐皇大御神もそれを否定はなさらなかった。
歴史修正を食い止めるという目的は一致しているものの、偶然生き残った無辜の民までも『歴史通りに』命を奪う検非違使に対して刀剣男士が嫌悪感を抱いており、現時点で検非違使との協力体制を取ることは難しいと思われる。