はじめに

 此度、遅ればせながら漸く審神者様方に業務ガイドラインとなる当指南書をお届けすることが出来ました。まことに遅くなりましたことをお詫び申し上げます。これより、当指南書を手引きとし、これまでと同じく業務を遂行していただきますよう、お願い申し上げます。

 さて、この歴史保全戦争と呼ばれる歴史修正主義者との戦いが確認されたのは22年前、2189年のことでございました。戦争と称しておりますが、これはこの日本の長き歴史の中でも特異な戦いでございます。公称を『戦争』と定義付けるべきかは現在に於きましても政府内部でも意見が分かれるところでございます。

 されど、名称など些細なこと。歴史を改竄し人の世を破壊せんとする破滅主義者の横暴を許すわけには参りません。歴史改竄が成ったとき、現代へどのような影響があるかは判りません。現在の日本は失われてしまうでしょう。我々は消えてしまうかもしれません。全く別のモノになっているかもしれません。けれど、少なくとも連綿と続いた歴史の末に存在する『今現在の私たち』という個は消えてしまうでしょう。我が国が、或いは我が国と関係を持つ国々が消えてしまう可能性すらあるのです。そのような事態はなんとしても避けねばなりません。

 そして何より、身勝手な歴史観と独尊の価値観による勝手な歴史の改竄はそこに生きた人々の尊き営みを否定することになります。我が国を形作るため懸命に生きた人々、歴史上の偉人であれ、名もなき市井の民であれ、それは現在の我々にとって欠かすことの出来ない歴史の大切な一要素であります。

 審神者様には現代社会より隔離された本丸空間に常駐していただき、唯一の人間として刀剣男士様を指揮し、戦神たる刀剣男士様にお仕えいただいております。多大なるご負担をお掛けしておりますこと、まことに申し訳なく、また大変有り難く存じます。

 政府一同、一日も早くテロリストを殲滅すべく、日々務めておりますゆえ、なにとぞ今しばらくお力をお貸しいただくよう、お願い申し上げます。

  

2211年3月31日

第●代内閣総理大臣

久邇宮敬仁