Episode:13 ニックネーム、つけて!

 本丸稼動から1ヶ月が経った。メンバーに変わりはない。まぁ、1ヶ月で31人揃ったから超好い感じじゃない? と思ったら、かなり速いペースで刀剣男士が集まってるらしい。うん、出陣回数多いからその分ドロップも増えるし、だからかな? 尤もレアドロップなんてありませんけどね! 墨俣の小狐丸も阿津賀志山の三日月宗近も、欠片も見当たりません~! ま、1回しか本陣行ってないから当然か。

 今は池田屋対策に短刀&脇差&保護者打刀を育成中。短刀と脇差は全員50以上に錬度を上げて、打刀は保護者枠で鳴狐なき君と兼さんに入ってもらう。

 正直兼さんと堀川を行かせるかは迷ったんだよね。池田屋ということは関係深いからね……。でも2人の主である土方歳三は丹虎方面探索で池田屋に赴いてからも屋内の戦闘には参加せず、会津やら幕府方やらが手柄横取りしないように周辺警備してたらしいから、それほど影響はないかなと思ってる。

 流石に加州と大和を行かせる気にはなれないんだよねぇ……。一般に流布してる話では沖田総司は池田屋で喀血したことになってるし(尤も、これは病状からして後世の創作って説もある。池田屋で喀血するほど病状が進んでるなら、その後の活躍は有り得ないってことらしい)、ある意味2人に池田屋はトラウマスイッチかもしれないしね。

 で、新撰組刀剣男士4人にはこういう理由で加州と大和は行かせず、兼さんと堀川に行ってもらいたいと説明した。加州と大和は複雑そうだったけど、納得してくれた。兼さんと堀川も承知してくれた。当時のことを知ってる自分たちの誰かがいたほうがいいだろうからって。

 というわけで、現在は短刀たち育成中。既に鳴君・骨喰ばみ君・堀川は錬度60を超えてるから一旦お休みにして、短刀と青江・鯰尾ずお・兼さん中心に長篠で錬度上げ。短刀と脇差だけじゃきついから、保護者枠として第1部隊で唯一錬度50台の一期と、それから保護者感満載の山伏ぶしさん、鳴君の代打で切国に入ってもらってる。

 この間、当然日頃第1部隊にいるメンバーは出陣なし。でも高錬度が必要な遠征に出てもらってる。打刀投石部隊は変わらず、日々検非違使日課ノルマのために出陣。

 まぁ、そんな感じで日々の戦いを過ごしていて、今日は休日。いつもの休日なら夕食は私が作るんだけど(日頃光忠たちに任せっきりだから、休日くらいはね)、今日は担当から外れてる。というのも、光忠と歌仙がどうしても作ってみたい料理があるのだとか。流石に人数が30人を超えると、普段の料理はどうしても一度に大量に作れる大鍋料理がメインになる。で、休日の今日、手の込んだ料理を作りたいってことみたい。昼食後から厨房に篭もってるから、どんな料理か楽しみだ。

 ってことで、私はこの1ヶ月のデータをまとめてるところ。毎日の業務はその日その日で一応まとめてはいるけど、中々トータルで見ることは難しい。ぶっちゃけ時間がない。なので休日の今日、やることにした。いつもなら遊ぼうと誘ってくる短刀たちも、今現在レベリングの最中で結構なハード出陣してるから、今皆お昼寝タイムになってる。因みにアニキな薬研は読書(薬学関係の書物を大量に購入してたな)、同じくアニキな厚は同田貫に鍛練の相手してもらってる。元気だな、厚。

「あのさ、主、話あるんだけどいいかな?」

 一通りのデータ分析も終わって、今後の出陣メンバーの予定でも立てようかとしていたとき、そう言ってやってきたのは加州。その後ろに大和、堀川、兼さんもいる。ん? 新撰組刀剣揃ってどうしたんだろう? 池田屋対策で何か不満でもあるのかな。やっぱり加州たちも池田屋行きたいとか。

「うん、いいよ。入って」

 休日だけどパソコンで仕事していたから執務室にいる。私室だと歌仙の指導により打刀以上立ち入り禁止だから入れられないけど、執務室なら問題なし。私室に打刀以上を入れないのは、『女性の部屋に男が入るのはよろしくない』という歌仙や蜂須賀、光忠の意見によるもの。見た目が子供や少年の短刀と脇差(青江除く)は入室OKだ。うん、ぶっちゃけ、短刀たちのほうが実年齢は上なんですけどね。刀剣としての現最年長は今剣いまちゃんで、次が太刀唯一の少年枠獅子君、それから青江、光忠、粟田口と並んでるから、打刀や太刀のほうが若いんですけど。まぁ、見た目に言動や日常生活の思考は引き摺られてるから、短刀たちは子供扱いでも間違いじゃないとは思う。大人びてる薬研や厚だって普段の生活の中では(見た目)歳相応な部分も結構あるし。

 私の言葉に加州たちはホッとしたように部屋に入ってくる。4人に座るよう勧めながら、コーヒーを準備する。執務室にはコーヒーメーカーと小型冷蔵庫完備だ。4人の好みは私に似て牛乳たっぷり入れた甘めのコーヒー。初めてコーヒー飲んだときには皆その苦さに『毒じゃないの!?』って驚いてたな。一応コーヒーは薬扱いされていた時代もあるんだけどね。

「新撰組刀揃って来たってことは、池田屋関連?」

 私もマグカップ片手に座りながら問えば、4人はきょとんとした顔をした。あれ、違ったのか。

「いいえ、違いますよ、主さん。池田屋の編成については納得してます」

「うん、僕たちも流石に沖田君が苦しむ姿は見たくないし……」

「見ちゃったら、あの人のこと助けたくて、寝返っちゃうかもしれない……」

 堀川に続いて大和と加州が言う。あー、これだけ刀剣男士になっても影響を受けてる主だし、やっぱりそういう気持ちにはなるよね。そういう不安というか懸念があるから、各刀剣男士に所縁ゆかりの深い時代には出来るだけ送らないようにしてる。一番影響受けそうなのが、維新の記憶の函館。あそこはまさに『土方戦死阻止部隊』が出るわけだし。まぁ、兼さんも堀川もまだいない初日に通り過ぎてるから敢えてそこに彼らを送る意味もなくて幸いだったけど。本能寺にも織田関連の刀剣は出さないようにしてたし。今ちゃんも流石に厚樫山には送れない。

 過保護かなぁって思わないでもないけど(裏切るとか寝返るとかは考えてない)、やっぱり慕った主の最期を何度も体験する必要はないでしょ。

「あれ、じゃあ、どうしたの?」

 池田屋関連じゃないとしたら、なんだろう?

「あー、オレは別に用があったわけじゃねぇんだ。ま、付き合いだな」

 兼さんは付き合い……ってことは用があるのは加州と大和と堀川か。

「僕は便乗かな」

「僕も、ですね」

 と、大和と堀川。じゃあ、用があるのは加州で、大和と堀川は序でにってところ?

 ってことで加州に目を向ければ、何か言いたげに、でも言い出しにくそうにしている。うーん、一体どうした?

 そのとき。

「主どのー! 主どのー! 聞いてください!! こんのすけどのが酷いのですー!!」

 きぃちゃんが駆け込んできた。きぃちゃんとこんのすけは同じ狐同士ということもあって割りと仲がいい。でも、しょっちゅう喧嘩もする。大和と加州みたい。今日の喧嘩の原因はなんだろう。お昼ご飯がキツネうどんだったから、そのお揚げの枚数とか?

 膝の上に乗ってきゃんきゃんと騒ぐきぃちゃん。その後ろからやってきたのは鳴君。

「主、ごめん。叱っとく」

 うちの鳴君は結構喋るらしい。先輩に『若干亜種だな』と言われる程度には。その鳴君がきぃちゃんの首根っこを掴んで持ち上げ、定位置である自分の肩に乗せる。

「何があったの、鳴君」

「こんのすけどのがひどいのですぅ」

 鳴君に尋ねたのにきぃちゃんが答えるのはいつものこと。肩の上、つまり耳に近い位置でキャンキャンと吠えるきぃちゃんの声にうんざりしたように、鳴君はその口を塞ぐ。

「心配ない。いつものどうでもいい食い意地の張った喧嘩」

 やっぱりそうか。きぃちゃんとこんのすけ、本丸マスコットの座を当狐たちは争ってるみたいで色々張り合い合うんだよね。そこに食い意地張ってるのもプラスされて、まぁ、五月蝿いこと。因みに本丸マスコットには既に五虎ちゃんの虎君たちが君臨してますけど。

「鳴君、ご苦労様」

 いつも狐2匹の喧嘩に巻き込まれる鳴君は大変だ。まぁ、一方の飼い主(?)だから仕方ないか。

「平気。邪魔してごめん」

 ヒラヒラと手を振って、鳴君はきぃちゃんを連れて部屋を出ていく。

「……いいなぁ」

「うん」

「ですね」

 そこにポツリという感じで漏らされた声。加州、大和、堀川の3人だった。一体3人は何を羨ましがってるんだろう? もしかしてペット飼いたいとか?

「ペット飼いたいなら、担当さんに確認してみるよ? まー、犬や猫なら大丈夫だと思う。あと兎とかかな。あ、でも、兎だときぃちゃんやこんのすけや虎君が狩りしちゃうかなぁ」

 そう言うと3人はがっくりと項垂れる。兼さんは私を呆れたように見てる。ん? これも違ったのか。

「確かに羨ましいのは鳴のことだよ! でもきぃのことじゃない!! 呼び方だよ!! ずるいよ、主ににっくねーむで呼んでもらえて!!」

「羨ましいです。兄弟は2人とも切国と伏さんって呼ばれてるし」

「和泉守だって、兼さんだしさー」

 へ? もしかして、話ってそれか? そう思って兼さんを見れば苦笑して頷いてる。因みにうちの本丸では大抵の刀剣男士は私が呼ぶのと同じ呼称で仲間を呼んでいる。だから、大抵のメンバーは和泉守を兼さんと呼ぶし、燭台切を光忠と呼ぶし、鳴狐は鳴と呼ぶ。

「あー……もしかして、3人ともニックネームで呼んでほしい?」

 まさかなぁ……と思いつつ尋ねれば思いっきり頷かれた。

「短刀たちはさ、まぁ、別に気にならなかったんだ。でも、脇差だとばみとずおはにっくねーむだし、打刀だと切国と鳴、兼さんに伽羅、太刀は伏さんと獅子。ずるくない?」

「まぁ、切国の兄弟は判らなくもないんです。本人のこんぷれっくすのこともあるから、主さんが配慮してくださった結果だというのは経緯を知ってる厚君に聞いてますし。兼さんのは十中八九僕の呼び方が伝染うつったんでしょうし」

「ばみとずおと伽羅は多分言いにくいからっていうのも想像つくんだよね。僕の大和や陸奥だって多分同じ理由で省略されてるんだろうし」

 口々に言う3人にそういうもんかと思う。いや、違う。そうだ、確かにニックネームもつけてもらえないのは寂しいんだった。私も学生時代や職場で体験してるじゃないか。同輩や後輩が先輩からニックネームや下の名前にちゃん付けで呼ばれる中、私だけ苗字呼び捨てで。ニックネームで呼ぶほど親しくもなければ親しくしたい相手でもないんだなぁって、そう思ったじゃないか。

「判った。じゃあ、皆の呼び方も考えよう」

 そう言うと3人の顔がぱっと輝いた。

「えーっと、じゃあ、まず言いだしっぺらしい加州清光からね。うーん、次から選んで。①清光 ②キヨ君 ③キヨ ④ナッツ」

「①から③は判るけど、④は何?」

「カシューナッツっていう食べ物がある。ナッツ……豆の中では一番好きなの」

「食べ物!?」

 流石にナッツは嫌だな。加州はちょっと甘えたなところもあるし、キヨ君かキヨがいいかも。

「キヨがいい。俺、クンって呼ばれるような柄じゃないし」

 お、加州もそれがいいのか。

「そっか。なら、これからは仕事のとき以外はキヨね」

「うん!」

 キラキラした笑顔で加州──キヨが頷く。ちょっと、桜舞ってる。そんなに嬉しかったのか。

「大和は既にニックネームっぽいけど、ヤス君にしようか」

 ヤス、よりはヤス君かな。ヤスっていうと『犯人はヤス』のネタを思い出すからパスしたい。元ネタはゲームだったらしいけど、この言葉だけで充分ネタになってるもんなぁ。

「主がそう呼びたいんなら呼んでいいよ」

 あれ、ツンデレ? でも、桜舞ってるから意味ないぞ、ヤス君。素直になれない感じが可愛い。

「で、堀川は……堀君じゃ普通だしなぁ」

「普通でもいいんですけど」

 何か他の苗字っぽいしね。かといってホーリーも違うし。

「堀川は可愛い感じあるし、国広くに君にしよう」

 いっそ、切国を国、堀川を国君、伏さんを国さんにしても面白いかもしれない。でも自分で混乱しそうだからやめておこう。

「国君、ですか……。国君、国君」

 ちょっと頬が赤くなって、可愛いです国君。いつも明るい感じの国君は余り含羞はにかんだり照れたりすることないから新鮮だな。

「なに、主、可愛いのは国だけ? 俺は可愛くないの?」

「だから、そういう素直に拗ねるところがキヨの可愛さだよね」

 よしよしと頭を撫でれば、キヨはえへへと笑う。うん、キヨは本当に素直だよなぁ。

 そんな3人の仲間を兼さんは微笑ましそうに見てる。全刀剣最年少とはいえ、時々兼さんは新撰組刀剣の保護者っぽくなることがある。元は太刀だったというのもあるのかな。結構刀種によって精神年齢が大人びてたりするし。人の姿に割りと引き摺られるもんね。

「そういえばさ、主。前に僕らの年齢設定作ってたでしょ。あれ、キヨや兼さんたちってどうなってるの?」

 ふと思い出したようにヤス君が言う。ああ、3日目にそういう話してたなぁ。もう1ヶ月以上前のことになるのか。ってか、ちょうど私が年齢のことを考えてたときに言うとか、テレパシー!?

「あー、興味ある?」

「あるに決まってんじゃん! 俺も入ってるんでしょ?」

 キヨが即座に肯定するから、ちょっと苦笑。あのときいなかった兼さんは不思議そうな顔をしていて、国君に説明を受けている。

「ちょっと待ってね」

 プリンターを起動して、1枚プリントアウト。そう、年齢表は覚書みたいにしてパソコンで文書にしてたりするのだ。

 打ち出されたそれをキヨに渡すと、4人で1枚の紙を取り囲み、覗き込んでる。

「あった! 俺、18歳か。あ、安定と同じなんだ」

「そう。なんか2人見てると同級生の喧嘩友達って感じでしょ」

 って、同級生って判らないだろうな。高校3年生の注記に関してはヤス君が説明してる。

「兼さんはこの中で最年長の19歳ですね。意外だな、もっと上かと思ってました」

 実は兼さんは17歳と19歳で迷ったんだよね。でも、17歳だとヤス君やキヨより下になるから、何かそれは違うなーって感じで19歳認定。

「あ、伏の兄弟は三十路超えなんですね」

「だね。現在本丸唯一の三十路超え。今いる刀剣男士の中で唯一、私より上の年齢設定だね」

「……ってことは、主は三十路か。太郎たろさんが29になってるし」

「兼さん、余計なこと言わない! 誕生日まだ来てないから三十路じゃない!」

 29歳と30歳の壁はとても高くて分厚いんだ!! 世間の扱いがね。

「元太刀現打刀は全員19歳なんだ。ってことは打刀は鳴含めて19歳多いね」

「え、青江が20歳? 脇差なのに俺らより年上!?」

「まぁ、青江さんは異色の脇差だし……僕らとはちょっと違いますもんね。ずお君が15歳なのはもしかしてばみ君と双子設定ですか? 粟田口は双子設定多いですね」

 確かに、3組双子認定してるもんね。薬研と厚、前田まぁ君と平野ひぃ君、ばみ君とずお。

「あ、獅子は17歳だ。俺らより1個下! 太刀より上かー!」

 獅子君はなんか元気一杯高校生って感じがしたんだよね。

「光忠が25で、長谷部が24、蜂須賀が26か。まぁ、妥当な感じか」

「そうだね、3人とも落ち着いてるし。で、一期さんが23歳。光忠さんや長谷部さんより下なんですね」

 プリントを見ながら4人はあれこれと言い合ってる。特に不満はなさそう。ま、不満があっても改めませんけどね! 飽くまでも私の中での認定年齢だし。

「これ、他のやつらに見せてもいい?」

 プリントをヒラヒラとさせながら言うキヨに頷く。別に見せて困るものでもないし、遊び感覚のものだしね。

「あ、それと他にもニックネーム呼び希望者いたら、言うように言って。呼び名って結構大事だしね。因みにぽんちゃんと倶利ちゃん呼びは改める気ないから。元々ペナルティだし」

 そう、実は現在同田貫は『ぽんちゃん』呼びになってる。伽羅も倶利ちゃん。

 中傷進軍は許可しているとはいえ、あの2人はちょっと無茶したんだよね。刀装全滅して重傷寄りの中傷で進軍しようとした。本丸に帰還しろって言ったのに聞かなかった。そりゃ、刀剣男士の意見を聞くし要望優先するとは言ったよ? でも他の隊員からも帰還したほうがいいって言われたのに当事者たちだけが進軍希望して。同田貫と伽羅がいるのは検非違使対策部隊。通常の敵であればもう1戦しても大丈夫だったかもしれないけど、もしここで検非違使が出たら刀剣破壊になってたかもしれない。お守りは持たせてるけど、それでもお守り発動も避けたかったし。で、無理矢理帰還させて、帰ってきた同田貫と伽羅は私に抗議して来た。それを歌仙と鳴君が拳骨で黙らせて、手入部屋に放り込んだ。

 その後、2人とはじっくり話し合いをして、刀剣破壊を防ぎたいっていう私の気持ちも伝えた。2人の中には自分たちはいくらでも替えの利く存在だっていう考えがあったみたいで、戦場で折れるなら本望って思ってたらしい。つくづくこのとき人間と器物の付喪神の分霊の考え方の違いを感じさせられたな。深夜にまで及ぶ話し合いの末(付きあってくれた歌仙と光忠、薬研には本当にご苦労様ありがとうという感じだ)、2人はなんとか私の気持ちを理解してくれた。で、今後無茶をしないようにというペナルティで2人の呼び名を2人が嫌がっている『ぽんちゃん』と『倶利ちゃん』にしたのだ。これが1週間前のことで、ペナルティ期間は1ヶ月。だからあと3週間はこの呼び名を改めることはしない。因みに『ぽんちゃん』は同田貫→タヌキ→ぽんぽこという連想による呼び名。

「判った、伝えとく」

「まぁ、他はいなさそうだけどな」

 確かにニックネームじゃないのは薬研をはじめほぼ号呼びのメンバーくらいかな。彼らは希望出さなさそう。正確に言えば、乱ちゃんや小夜ちゃんもニックネームとは言い難いけど。

「薬研をやっくん、厚をあっくんって呼ぼうかなぁ……」

 短刀で号を呼び捨てなのは2人だけだし。そう思って言えば、4人にやめておけと言われた。短刀のアニキたる2人は嫌がりそうだと。うん、確かに私の中でも彼らはニックネーム呼びする対象じゃないんだよね。なんというか、『薬研』『厚』って呼ぶのがしっくり来るというか。それに関しては宗三・長谷部・一期も一緒。

 蜂須賀はいっそ、ハチとかハッチーとか呼んでやりたい気分になることもあるけど、ハチっていうとうっかり八兵衛を思い出してしまうからやめておこう。寧ろ彼のビジュアルからはム○様とでも呼びたくなる。初めて彼が現れたとき、あの髪色髪型、キンキラ金な装束に『黄金聖闘士ゴールドセイントかよ!』と思ったなぁ。高校時代にアニメ放送があって、当時中学生だった妹が嵌り、不死鳥×乙女座で腐女子化してたから……。ああ、あれが妹の腐女子人生のスタートか。私がこっちに来る前も半生で萌えてたな。因みに私は某ゲームジャンルの男女カプで温泉活動してた。

 って、私や妹の同人活動はどうでもいいことだ。……妹がここの現状知ってたら腐萌えしたかもしれないと恐怖したこともあるけど、流石に家族に近しい同僚でやられたら私も切れそうだ。これだけ種類の違う美形が揃ってたら気持ちは判らんでもないけどね。






 こうして、うちの本丸では刀剣男士は基本ニックネーム呼びすることになった。そのせいで後々やってくる石切丸・蜻蛉切・岩融・長曽祢虎徹・日本号といった見た目年齢保護者枠の面々も、外見に似合わない呼び名になってしまうのだが、当然、このときの私はそんなことを知るよしもなかった。