──A国xxx年、大規模な旱魃の発生を予測。現人類の技術力では対処不能。
──A国祭神による神託(本人宛)を発動。
『〇〇村の水不足、娘っ子が水神様の祠で祈ったら泉が湧き出てなんとかなったんじゃと!』
『うちの村にも来てくれたぞ、水の乙女。〇〇村の娘っ子だ。水路が涸れかけとったんだが、湧き出たんじゃて』
──想定よりも聖女の情報拡散速度が速い。観察を強化。
『奇跡の乙女じゃ! 〇〇村の△△は聖女に違いない!』
『何、聖女だと! 聖女を王家で囲い込め! 王子の婚約者にして確保しろ!』
──不測の事態。王家による聖女囲い込み。
≪聖女に癒しの力や豊穣の恵みを求めても、それ彼女の権能外なんだがのぅ≫
──聖女機能発動。xxx年までに大地の保水力を高めるため、各地の神殿にて祈祷を行うべし。
──王家の囲い込みにより、神殿巡礼発動が阻害。
──不穏の気配を察知。聖女喪失による神罰の歴史を誤認。
『聖女を蔑ろにしたら、旱魃に地震に飢饉だと!? ただ聖女一人のために無辜の民が被害に遭うというのか!』
『なんと! それでは我らは聖女のご機嫌取りをせねばならんというのか! 下賤な平民のくせに生意気な!』
≪勝手に囲い込んだのそっちじゃろ。聖女も望んではおらんのに≫
『聖女なんてたった一人の存在のせいで国が被害に遭うなんて、聖女じゃなくて魔女じゃないか!』
『魔女だ、魔女だ!』
──不測の事態。反聖女過激派(国王と近臣)により、聖女投獄。
──不測の事態。反聖女過激派(国王と近臣)により聖女、殺害。
──水の恵み消失。
≪あちゃぁ。自分らで救いを拒否したかぁ≫
──聖女消失により、予測された旱魃被害発生。
──旱魃被害によりA国にて大規模飢饉発生。
──A国、滅亡。
「ねー、神様。これ、あたしのせい?」
≪うんにゃ。お前さんはなーんも悪うない≫
「聖女喪失による神罰ってホントにあるの? あたし死んで神様なんかした?」
≪しとらんぞ。人間だけじゃこうなることが判っとったから、お前さんに水の恵みを与えて助けようとしたんじゃ≫
「そっかー。あ、うちの村と隣の村は無事だねー」
≪あの村はお前さんに感謝しとったし、お前さんの祈りが地に馴染んでおったからな≫
「まぁ、お父ちゃんとお母ちゃんと兄弟が無事ならいいや。村の皆も何とかやって行けるみたいだし」
「っていうか、神様、神罰の歴史って間違ってるってことだよね」
≪そうだのう。逆じゃな。聖女を排除したから神罰で災害が起きるのではない。災害が起きるから聖女が派遣されておるのに、それを自らの欲望で排除するゆえに災害が防げなかっただけじゃの。人に対処できん災害だからこそ、聖女が現れるんじゃからのぅ≫
「それ、神託とかで教えてあげたほうがよくない? 今後の聖女のために」
≪いやー、人が人の力で何とかするって宣言したからの。もう聖女は遣わさん。お前さんには済まん事をしたのぅ≫
「うん、まぁ、もう仕方ないよね。あたし殺した奴らは自業自得な末路迎えたし、あたしはしばらく天界でのんびりしたら輪廻の輪に戻るよー」
≪そうかそうか。次の生は平凡に穏やかに生きられるようにしておくぞ≫
「うん、ありがとー」