この冒険者ギルドというものも実は結構重要な場所となっています。
いくつかのイベントでは『(皇宮・学院内施設)に行く』or『冒険者ギルドへ行く』という選択肢が発生いたします。ここで冒険者ギルドへ行かずともゲームは進行しますし、攻略対象者の攻略は可能です。エルナンドルートであればグッドEDはクリアできます。
『(皇宮・学院内施設)に行く』を選択すると、攻略対象者と会うことが出来、そこで親密度が上がります。一方『冒険者ギルドへ行く』を選択すると、そこで出会うのがアレクサンドラです。
初回ギルド訪問時の冒険者登録の手助けに始まり、新人冒険者であるヒロインにアレクサンドラは先輩冒険者として様々なアドバイスをしてくれるのです。更にアレクサンドラと親密度が上がると、クエストを評価Aで達成する方法や攻略対象者の情報もくれますし、ベスト(エルナンド以外はグッド)EDを迎えるための選択肢のヒントもくれるのです。つまり、冒険者ギルドへそれなりの頻度で出向くことによって、アレクサンドラはライバルの悪役令嬢ではなく、一番いいEDに至るための心強く頼りになるサポートキャラクターとなるのです。
そうしてアレクサンドラと親しくなり(冒険者ギルドで出会うと必ず親密度が上がりますし、一緒にクエストを熟すと爆上がりします)親密度75を超えることで漸くエルナンドベストEDの達成条件が1つクリアされることになります。
そう、ライバルと認識されているアレクサンドラ攻略がエルナンドベストEDには必須なのでございます。
それ以外にも、多くの乙女ゲームと違っている選択肢はかなり多くございます。
例えば、庶民上がりで貴族としてのマナーが出来ていないヒロインに貴族令嬢たちがキツい言葉で忠告やアドバイスを致しますと
『A:仕方ないじゃない、知らなかったんだもの。そんな言い方しなくても……』
『B:そっか、お貴族様はそんなふうにするんだ。面倒臭いけど、仕方ないか』
という選択肢が出ます。ここでAを選択すると隠しステータスの【貴族常識】が下がり、敬意が上がりにくくなります。
更にこの選択肢の後、このことを知ったエルナンドが令嬢たちを批判し、それに対しての選択肢が発生いたします。
『A:そうよね、私は私らしくしていればいいのよ』
『B:殿下、令嬢たちの言ってることは間違いじゃないわ』
これでAを選ぶと親密度は上がりますが敬意が10ほど下がります。10も下がるとそれを挽回するのは難しく、ここでAを選んでしまうとほぼほぼベストEDに至ることは不可能です。
また、婚約者ということになっているアレクサンドラを無視してヒロインとのデートを選ぶエルナンドに
『A:エルナンド様、そんなに私のことを…』
『B:婚約者との先約をすっぽかすって、人としてどうなの?』
という選択肢が出ますが、Aを選ぶと親密度は上がりますが敬意は爆下がりします。Bを選ぶと敬意が上がりアレクサンドラとの親密度も上がります。
このように、割と有り勝ちな選択肢とは逆が正解というパターンも多く、エルナンドのベストEDはかなり条件が厳しいともいえます。結果、レグルスルートを開放出来ないプレイヤーも割と多かったようです。
更に
エルナンドとヒロインが幸せそうに抱き合うスチルが表示され、『皇太子を自称するエルナンドとリザリアは結ばれ、幸せの絶頂を味わうのであった』というナレーション文章が表示されます。一見何も問題はなさそうですが、勘のいい人なら文章に『これがグッドエンド?』と違和感を覚えるでしょう。『皇太子を自称する』ということは実は皇太子ではないという意味ですし、『幸せの絶頂』ということはここから下り坂になりこの後不運や困難が待ち受けているということになりますから。
このエンディング、初見ではグッドEDに見えますが、隠しシナリオの各エンドロール後に実はバッドEDであったことが判明いたします。隠しシナリオのエンドロール後に暫し黒い画面が表示され、エルナンドのこのエンディングが流れ、隠しシナリオ開放前とは違って最後のスチルがモノクロになります。それだけでも不穏なのに、更にそのスチルはガラスのように割れて粉々になり、『何も知らぬ愚かなエルナンドとリザリア。皇太子を僭称したエルナンドは反逆罪により処刑、それを扇動したとしてリザリアもまた断頭台の露と消えたのだった』というテキストが表示されるのです。つまり、2人とも死亡というバッドEDの中でも最悪のものだということが判明するわけです。最初にこれを見たときは『スタッフ、実はこの2人のこと嫌いだろ!』と叫んでしまいました。
他にもスタッフが実はヒロイン嫌いじゃないの? と思わせるものはいくつかございました。レグルスルートのバッドとグッドのエンディングがそうです。
レグルスルートではヒロインの編入初日にレグルスとの出会いがあります。そこで
『A:第一皇子だわ! 挨拶しなきゃ!』
『B:第一皇子だわ。近寄りがたい……取り敢えずお辞儀しとこ』
という選択肢が表示されます。ここでAを選んでしまうと即バッドED。Bを選ぶと更に選択肢へと進みます。
お辞儀をしてレグルスが通り過ぎるのを待つヒロインにレグルスが『そなたが編入生か』と尋ねるのに対して、
『A:はい、レグルス様!』
『B:はい、第1皇子殿下』
の2つが表示され、Aを選ぶとそのままバッドEDとなるのです。
バッドEDは実はこの2つの選択肢間違いさえなければ起こりません。ですが、起こると悲惨です。ゲーム開始早々にゲームオーバーです。近衛兵に押さえつけらるリザリアと、何の感慨も感情もなく背を向けて去っていくレグルスというスチルで終わるのです。表示されるテキストは『身分相応の振る舞いをしなかったリザリアは許可なく発言し、更に皇族の名を呼ぶという愚を犯したため不敬罪によって捕らえられた。退学処分だけで済んだのは皇太子レグルスの慈悲ではなく、単に彼がリザリアを道端の小石程度にしか認識していなかったがゆえの僥倖であった』という無慈悲なもの。はっきりとレグルスはヒロインに興味も関心もないよ! と示してる辺り鬼畜ですわね。まぁ、初対面であれば何の好意もありませんので当然ですけれど。
更にこれを上回る惨いエンディングが実はグッドEDでございます。グッドEDなのに何故と思われるかもしれません。一見しただけであれば惨いとは思わないかもしれません。
エンディングの最後はパーティらしき一幕。皇帝として玉座にあるレグルスの隣には皇妃であるアレクサンドラがおり、その数歩後ろに着飾ってはいるものの当然皇妃よりは劣る衣装を身に纏ったヒロインというスチルで終わります。テキストでは『レグルスの愛を得たとはいえ、リザリアは所詮男爵家出身。金で買った男爵位の令嬢が皇帝の妻となることは出来ない。下位貴族ゆえに愛妾の中でも最下位の才人の身分を与えられたけれど、真実皇帝レグルスが愛しているのは自分だけだ。そうリザリアは信じている。そうしてリザリアは与えられた宮にて皇帝の訪れを待つのだった』と流れるのです。
一見、身分制度に負け正室にはなれなかったけれど真実の愛はヒロインにあり! とも見えます。ですが、飽くまでもテキストも『リザリアは信じている』というリザリアの主観でしかなく、客観(或いはレグルス目線)ではどうなのかは明かされておりません。
その裏にあるものはアレクサンドラシナリオで明かされます。
アレクサンドラシナリオの場合、攻略対象者ごとのEDはグッドエンドだけで、ノーマルEDとバッドEDは共通です。メインがRPGですから、それも仕方のないことではございますけれど、フィロマって乙女ゲームですわよね?
ノーマルEDではアレクサンドラは誰とも結ばれず冒険者を続けるというものになり、グッドEDは各攻略対象と結婚という終わりになります。
そしてバッドEDではアレクサンドラはレグルスの皇妃となります。バッドなのに!? という感じですけれど、所謂愛のない政略結婚という扱いですわね。政略結婚で愛がないのは当たり前だと思うのですけれど。しかも全攻略対象者最高スペックのレグルスの皇妃になるのがバッドEDというのはなんというご褒美なのでしょう。因みにレグルスグッドEDでも皇妃になりますが、その場合は相思相愛の夫婦となり、各バッドEDの場合は不本意な結婚で冷遇されるor心に別の男性への想いを秘めたままの仮面夫婦という結末でございます。
そして、このアレクサンドラシナリオのレグルス√グッドEDやバッドEDで明かされるのが、実はリザリアシナリオのレグルスグッドエンドの真実です。
実はフィアナ皇国において皇位継承条件がかなり特殊で厳しいものであるため、皇帝は沢山の子を持つことが必須となっています。そのため、皇帝は最低でも5人の妻妾を持つように義務付けられているのです。ですので、レグルスは愛する皇妃アレクサンドラの他に義務として側室や愛人を持たねばならず、選んだのがヒロインだったというわけです。多少なりとも関わりを持ち、アレクサンドラへの敬意もあり、身分的にアレクサンドラの脅威にはなり得ないヒロインは、皇妃を愛しているレグルスにとっては都合のいい相手だったというだけで愛妾とされたのです。そういった経緯があっての入内ですので、ヒロインの宮への訪れは月に1回あればいいほう、ということまでアレクサンドラシナリオのエンディングで明かされます。レグルスも開発チームも鬼畜ですわね。
ここまで徹底していれば、プレイヤーが開発陣を性格悪い・性悪というのも納得でございますし、アンチが多くクソゲーと言われてしまうのも仕方のないことだと思えます。けれど、わたくしは大好きなゲームでございました。