可憐なヒロインと多くのイケメン、美麗なグラフィックに豪華声優陣、中世ヨーロッパ的な世界観に魔法のファンタジー要素と、一見乙女ゲームの王道を行くようなフィロマはそれなりに売れたようでございます。けれど、生粋の乙女ゲーム愛好者からはあまり評判は良くございませんでした。
実は隠しキャラレグルス開放に至る鬼畜仕様の分岐条件や隠しルートで発覚するリザリアとエルナンドの扱いの悪さから『乙女ゲームアンチなのでは?』との見解さえございました。これは『既存乙女ゲームの社会的背景無視のヒロイン優遇ご都合主義』『社会的責任を負う立場を軽んじすぎる乙女ゲーム』への不満を開発スタッフが抱いていたためともいわれております。
そのため、既存のゲームのようにイケメンに囲まれてキャッキャしたい普通のユーザーや悪役を断罪してスカっとしたい層、身分違いの恋に夢見る層などの既存の大部分のユーザーからは不満が続出でした。『隠しキャラクターが出てこない! バグじゃないんですか!?』という問い合わせという名のクレームでユーザーサポートは大忙しだったそうでございます。尤も開発スタッフからの回答は『指南書よく読めwwww』でございましたけれど。
ゲームの攻略本もアルメコアの出版部門から発売されておりました。けれど、この攻略本には隠しキャラクターの開放条件が『エルナンド
実はこの攻略本、ユーザーが『攻略本』といっているだけで、公式は飽くまでも『指南書(手引き)』としか言っておりませんでした。実際に書籍タイトルは『フィロマ指南書~攻略の鍵~』でございましたし。
指南書にはどの選択肢を選べばどういうルートに入るのかの記載はなく、どういったイベントがあるのかだけが紹介されておりました。また、エンディングについてもどういったEDがあるかしか記載されておらず、その内容も条件も一切提示されておりませんでした。
攻略の鍵として『中世ヨーロッパ、所謂封建社会の貴族制度がベースです。その社会背景、貴族のルール、人としての思いやりと上位階級や皇家に嫁ぐことの意味を判っていれば隠しキャラクターは簡単に開放出来ます』と記されているのみでした。つまり、21世紀の現代日本の感覚で選択肢を選んではいけない、貴族社会に合わせた行動をし、自分や攻略対象者よりもモブですらない平民を思い遣るべしということでございます。ヒロインの個性である『身分制度に囚われない、天真爛漫さ』の否定ともいえるでしょう。ですから、隠しキャラ開放に至れないユーザーはかなりの数いたようです。
その代わり、ヒロインや攻略対象者たちのパーソナルデータは、ゲーム攻略に関係あることもないことも詳細に設定され、記載されておりました。いえ、一見関係ないことも全て攻略の鍵ではございましたけれど。また、社会背景や皇家・貴族のルールなども人物紹介に合わせて説明されておりました。なお、この皇家・貴族社会のルールはゲーム付属の説明書のキャラクター紹介にも合わせて示されておりました。例えば、レグルスの紹介に『皇太子となるために5級冒険者となった』でごさいますとか、アレクサンドラの説明に『皇妃となれる四神公爵家直系令嬢』でございますとか。リスティスの説明にも『ルールを無視して声を掛けてきた下位貴族〇〇子爵とは犬猿の仲』というようなものもございましたね。
ですから、しっかりと説明書を読み込む派・歴史好き派はあっさりとエルナンド√をベストEDで迎えておりましたし、隠しヒロインシナリオで『乙女ゲーム何処行った!』と叫ぶことになりました。
コアなファンも多いけれど、乙女ゲーム(逆ハーレムゲーム)ユーザー層からは不評でもあり、アンチも結構多かったゲームでございますね。
まぁ、一見ベストEDのようなEDを迎えたはずが実はバッドEDだった、なんてこともございましたから。しかも隠し攻略対象者のグッドEDが実は愛されていない愛人エンドでございましたし。開発チーム性格悪いと言われても仕方ありませんわね。
そして、そんな性格悪い開発チームが手掛けたゲームと酷似した世界が、今、わたくしがいきているこの『フィアナ皇国』なのです。
中々に性悪なスタッフによって製作されたこのフィロマ、隠しコンセプトが『現実的な乙女ゲーム』でした。隠していないような気もいたしますけれど。
まず、乙女ゲームにありがちな逆ハーレムエンドはございません。といいますか、同時攻略は出来ない仕様となっております。
攻略キャラの攻略進捗は4段階に分かれておりますが、同時進行は出来ません。どのキャラクターも進度は
段階①ヒロインも攻略対象も知り合い程度
段階②攻略対象がヒロインに片想い状態
段階③ヒロインと攻略対象者の両片想い状態
段階④恋人となり周囲に認めさせる段階
となっております。段階①から段階④までは、それぞれにその段階を認定するようなイベントがありますけれど、段階②までは全攻略対象同時進行は可能です。けれど段階③を1人クリアすると他の攻略対象者はヒロインから離れて行き、殆どゲームに登場しなくなります。出てきてもモブ扱いですし、親密度は初期状態に戻り会話も初期の素っ気ないものとなります。
現実と照らし合わせればそれも無理のないことですわね。好意を寄せていた少女が別の男性のモノになったら、余程執着していない限りは諦めて(或いは諦めるために)関わりを持たないようになるものではないでしょうか。
けれど、世の乙女ゲームファンにはこれは不評でした。乙女ゲームファンの中には一定数、本命以外にもチヤホヤされたいと思う層はいます。現実ではそう思わないにしてもゲームの世界でくらいそうされたいと思っても無理はありません。
更にユーザーが不満に思ったのが、メインヒーロー扱いされているエルナンドルートでした。これがかなり攻略が厄介だったのです。
エルナンド以外の攻略対象者は隠しキャラクターのレグルスも含め、EDパターンは3つでした。ノーマルED・グッドED・バッドEDです。けれど、エルナンドはプラスしてベストEDがございました。このベストEDを迎えないと隠しキャラのレグルスは開放されないシステムでした。
そして、このエルナンドルートですと、ヒロインのキャラクターである『身分制度に囚われず天真爛漫』と活かした選択肢を選ぶと、絶対にベストEDにはなりません。いいえ、他の攻略対象者でも同じです。決してグッドEDにはならず良くてノーマルEDなのです。
まず、よくあるパターンですと、普通に『エルナンド様』とか親しくなれば『エルナンド』と呼ぶことになるであろう名前。各所で『エルナンド殿下』『エルナンド様』という、名前の敬称部分の違いだけで他の言葉は同じ選択肢が表示されます。その場合、殿下とついていないほうを選ぶと親密度が上がりますので、一見こちらが正解のようですがそうではありません。フィロマには親密度の他に敬意というパラメータがあり、この敬意が下がってしまうのです。殿下と呼ばなくても敬意が下がらなくなるのは段階④になってからで、段階②までは殿下と呼ばないと親密度が下がり敬意は大幅に下がることとなります。
この敬意、あまり重要ではないように思わせておきながら、エルナンドベストEDとレグルスルート攻略においては尤も鍵となるパラメーターでございます。特にエルナンドベストEDとレグルスグッドEDを迎えるためには非常にタイトなパラメータ管理を行なわねばなりません。
基本的にフィロマは親密度が大幅にアップする選択肢は確実に敬意が下がる仕様となっております。ですので、敬意も上げるためには親密度アップ小の選択肢を選ばねばなりません。一応の救済措置なのか、敬意が上がる選択肢を選んで親密度が下がることはないので多少はマシでしょうけれど。
しかも攻略サイトの検証ではエルナンドベストEDに必要な敬意を確保した場合、攻略対象者との全会話・イベントのみでは親密度が必要数値に10ほど不足してしまうのです。
では何でその不足分を補うのかといえば、任意イベントである冒険者ギルドのクエストを受けることによって親密度を上げるのです。
しかもここでもクソゲーと一部から言われてしまう要因があります。冒険者ギルドのクエストで親密度が上がるのは【難易度★★★】からで、しかも上がる親密度は僅か1。おまけに【クエスト達成評価:A】でなければ親密度は上がりません。更に【難易度★★★】を受諾できるようになるには【難易度★】と【難易度★★】をそれぞれ10回評価B以上でクリアしなければなりません。つまり、最低でも任意の要素であるはずのクエストを30回は受けないといけないということになります。クエストはアイテム収集系や護衛、配達、魔族討伐と様々なものがありますが、基本的に【難易度★★★】は魔族討伐になるので、ここはRPG要素が強い部分になります。
ですから、RPGを殆どしない乙女ゲームユーザーにはこれもまた不評となる一因というわけです。