第12章 新たなる波乱と過去の清算

 夏生梨かおりとの結婚式を挙げたデサフィアンテはマグメルドに新婚旅行に来ていた。FCH婚そのものはもう10年近く前にしていたから、今更『新婚』ではないが、血盟員たちの勧めもあり、休養の一環としてやってきたのだ。

 マグメルドはイル・ダーナによって保養地となっている。どうやら精神的に疲弊しているプレイヤーたちの様子を知り、保養施設を作ったようだ。南部地下のダンジョンや北部はゲームと同じくモンスターも出現するし、精霊の霊廟や地底湖、シップセメタリーといったダンジョンも以前と同じく美味しい狩場となっているが、南部のフィールドには一切のモンスターが出現しなくなった。その南部にはいつの間にかリゾートホテルのような施設が作られており、血盟に在籍していればそれを無料で利用できるようになっている。もちろん、血盟無所属であっても利用はできるのだが、その場合はそれなりのマルクを支払わなければならない。この世界は徹底して血盟に所属する者への優遇措置が取られているのだ。

 1週間ほど夏生梨と2人だけのゆったりとした時間を満喫したデサフィアンテは、体調も精神状態も完全に回復させてセネノースへと戻った。新フィアナ暦9月中旬のことだった。この世界に来てやがて1年が経とうとしていた。

『モナルキア連盟』の活動も再開していた。休止期間は特に問題も発生せず、世界は穏やかな時の流れの中にあった。活動を再開したとはいえ、休止前と活動内容に大差はない。合同クランハントなどで各血盟間の連携を図ったり、情報を共有したりとこれまでと変わりはなかった。

 相変わらず『ファトフ同盟』は狩場を独占しようとし他者を排除していたが、【水都華園】など彼らを挑発していた血盟もそれをやめ、また挑発にも乗らなくなった。華水希たち楽天的な認識を持っていた君主たちも、先達君主たちの疲労度合いを見、色々と思うところがあったのだろう。それまでと違って己の血盟員に挑発しない、挑発に乗らないことを厳命していた。それに反すれば血盟から除名BANすることを明言して。

 そういったこともあって、君主たちも比較的穏やかな時を過ごすことができていたのである。

 しかし、それは飽くまでも束の間の休息に過ぎなかった。

【第4陣を間もなく召喚する。これが最後の召喚である】

 約1年ぶりにフィアナ全土にイル・ダーナの声が響き渡った。

 そのときデサフィアンテは久しぶりに血盟員全員揃って翡翠の塔80階に来ていた。翡翠の塔高層は『ファトフ同盟』の独占状態ではあったが、今回ここにいたのは然程レベルの高いパーティではなかったらしく、デサフィアンテたちを見るや即座に撤退していた。

 デサフィアンテたちは狩場を独占させないためには自分たちが強くなるしかないという結論に至り、狩場独占が始まったころから一層のレベル上げに努めていた。その結果、最もレベルの高いくらき挑戦者がLv.96に達し、デサフィアンテと夏生梨がLv.95、チャルラタンがLv.94、理也まさや、イスパーダ、疾駆する狼、迅速はLv.93と幹部たちは全員Lv.90を超えている。最もレベルの低い第3陣のメンバーでもLv.88になっている。

 つまり、平均でもLv.90を超えている【悠久の泉】、しかも全員揃っているとなれば19人もの集団にPKを仕掛けてくる者はほぼ皆無だった。それもあって、近頃は独占された狩場に行く際には数血盟合同で赴き、【悠久の泉】が露払いを務め、『ファトフ同盟』を狩場から排除したあと、それぞれのパーティに分かれて狩りをするということもやっていた。

 ちなみにここでもイル・ダーナはシステムの変更をしており、キャラクター名表示を『ON』にしていると、名前とエンブレムにプラスしてレベルまでが判るようになっている。ゲームではLv.80以上の上位変身があるのだが、この世界ではそれが適応されていないため、殆どの者が虹変身となっている。それゆえ、ゲームのように変身によっておおよそのレベルを判断することは難しい。よって無用のPKを防止するためにこういった変更が為されたのではないかとデサフィアンテたちは推測している。

 PKを仕掛けて返り討ちにされるなど、『ファトフ同盟』側にしてみれば物笑いの種にしかならず、それはプライドが許さない。そんなことになれば侮られて狩場独占などできなくなる。だから、彼らは明らかに自分たちよりもレベルの高いパーティがやってくると、襲いかかることなく即時撤退するのだ。自分たちが帰ったあとに来たのだから仕方ない、見逃してやる。そんな言い訳をするために。

「第4陣来たんだな。戻るか」

 デサフィアンテの言葉に幹部たちが頷く。そしてそれぞれが『血盟帰還スクロール』でセネノースの血盟居館アジトへと帰還する。全員が飛んだのを確認して、最後にデサフィアンテは血盟居館アジトへと戻った。

 血盟居館アジトに戻ったデサフィアンテは執務室からパソコンを持ってくると、居間に全員を集めた。もっとも指示されるまでもなく全員が同じようにパソコンを持って既に集まっていた。

「今回も流れは第3陣召喚のときと同じ。俺たちプリが人を集めて説明するから、ナイトはセネノース、エルフはティルナノグ、ウィズはアヴェリオン、エレティクスはアンヌンで案内な。夏生梨と千珠ちずさん、アルは血盟居館アジト待機で、誰が来てるのかの確認と、新規連中がパニクってるだろうから、お茶の用意しといて」

 確認を含めてデサフィアンテは指示を出す。その一方で、例によってスカイプに接続して君主仲間と連絡を取り、行動予定の確認を行なう。

「召喚から30分程度で新規への説明を始めて、それが30分から1時間くらいで終わる。終わってから1時間くらいでまたプリ会合になるから、うちの関係者への説明は理也に任せる」

「了解。でも、うちの関係者って、もう殆どこっちに来てるだろ」

 頷いて了解の意を示しながら、理也は言う。【悠久の泉】で活動していたプレイヤーの殆どは既に集まっている。いないのは解散後他の血盟でプレイしていたメンバーくらいなものだ。だとすれば、彼らは最後にいた血盟に行くだろう。

「クルーン、ヨクラートル、ふと男は別クランに行ってるよな」

「無所属なんはムリエルだけとちゃうかな」

「あとはアグアベラノ君くらいでしょうね」

 チャルラタン、ディスキプロス、バルシューンが言う。

 クルーンは血盟初期から在籍していたナイト、エレティクスのヨクラートルとエルフのふと男はクルーンの現実世界リアルの友人で、彼の紹介で加入したプレイヤーだ。3人揃うとお笑い芸人のようで、血盟内では『あふぉトリオ』と呼ばれていた。【悠久の泉】解散後は3人揃って高レベル者の多い血盟へと移っていった。もっとも間もなくクルーンを除く2人は引退したようだが。

 ムリエルは【悠久の泉】には珍しい女性のナイトでディスキプロスと同時に加入した最後の初心者の1人だった。血盟解散が決まったときにちょうどいいからと、別のゲームに移住している。

 アグアベラノはバルシューン、千珠、サディークと同じく【自由気まま】出身のエレティクスで、【自由気まま】解散後、高校入試のために休止し、復帰後は旧知のデサフィアンテを頼って【悠久の泉】に加入した。生活環境が変わったことから徐々にINも減り、結果的に引退したプレイヤーだ。ちなみに愛称は水夏すいかで、これはキャラクター名のアグアベラノがスペイン語で『水』と『夏』をあわせた言葉だからだ。

「暴ちゃんも来てないけど、もし来たとしてもお父様のいる【スピリット・スピリッツ】のほうがいいかもね」

 暴ちゃん ── 暴走剣士がもし来てしまったとしたら、やはり実父のいる血盟のほうが安心だろうと夏生梨は言う。もっとも、彼女たちにしてみれば暴走剣士はいつまでも中学生の印象があるせいか、彼にだけはこの世界に来てほしくないと願っている。

「げ、すげぇ勢いで増えてる」

 血盟員たちの会話を聞きながら人口を確認していたデサフィアンテは刻々と変わる数値に目を見開く。第1陣・第2陣合わせて203人、第3陣が309人、その後戦争による死者が出たため、現在のフィアナの人口は463人となっている。しかし、人口確認をするたびにどんどん数値は増えている。

『730 ……900 ……』

『随分来たな ……』

 モニターの向こうでショウグンとアズラクが呻くように呟く。予想していない大人数だ。

『1000人でストップしたようね。フィアさん、動きましょう』

 クリノスが呆然としている君主たちに喝を入れる。

「ああ、そうだな。じゃあ、全員全茶を。場所はそれぞれ打ち合わせどおりに」

 デサフィアンテも気を取り直して指示を出す。同時に各君主たちがワールドチャットで呼びかける。血盟員たちもそれぞれ動くために血盟居館アジトを出て行く。

「じゃあ、俺も行ってくる」

 早速、知人たちが来ているかどうか確認を始めた夏生梨らに声をかけると、デサフィアンテも【悠久の泉】及び【硝子の青年】関係者を集めるセネノース豚レース場へと向かったのであった。






 君主たちが各地で状況説明を始めたころ、血盟員たちは血盟居館アジトへと戻っていた。それぞれが友人登録を確認し、知り合いが来ていないかのチェックをしている。

「フォノさん ……これ」

 珍しくアルシェが眉を寄せて自分の友人リストを示した。そこにはあまり見たくない名前がグリーンで表示されている。つまり、この世界に来ているということだ。

 声をかけられたドロフォノスは滅多にないアルシェの不快そうな表情に若干驚きながらも、示された画面を見て、それに納得した。

「コイツが来てるってことは ……もしかしたら」

 ドロフォノスはそう呟くと、これまで登録していなかった3人の名前を登録する。案の定、その新たに登録した3人もグリーン表示、この世界に来ていることになる。

 それに眉を顰めつつ、今度はキャラクター検索で状態を調べる。4人とも血盟無所属だ。この世界に在籍していた血盟が存在しなければ表示は無所属となる。となれば、もしかしたら彼らがデサフィアンテを頼ってくることがあるかもしれない。

 普段はお気楽キャラの代表のようなアルシェとドロフォノスが揃って表情を険しくしていることにチャルラタンが気づき、どうしたと声をかける。

「絶対うちに関わらせたくない奴が4人来てる」

 不機嫌さを隠そうともしない声でドロフォノスは答える。それに他のメンバーも不審そうな表情になる。

「シオちゃん卿、フェアラート、トライゾン、花都が来てる」

 ドロフォノスから告げられた名に【硝子の青年】解散の経緯を知る夏生梨、チャルラタン、めんまの表情が険しくなる。彼らほどではないが冥き挑戦者も不快げな表情をしている。

「え? 何、どうしたのさ」

 4人の表情の変化に、当時を知らない者たちは驚く。

「花都はまぁ、そこまででもないけど、他の3人は俺、PKしてやりたい」

 普段は賑やかし担当のめんまの低い声に、【硝子の青年】末期を知らないメンバーはまたも驚かされる。その声にも内容にも。

「気持ちは判るけど、するなよ」

 諌めるチャルラタンの声も普段の彼よりも低い。明らかに自分を抑えている声だ。

「あんな奴ら、めんまさんが手を下す価値もねぇよ。つーか、やるなら俺にやらせて」

 止めると見せかけて過激なことをドロフォノスは言う。状況の判らない者たちは不思議に思うだけだ。だが、彼らがここまで怒りを抱いているのであれば、原因は想像がつく。

「そいつら、じゅんに何したんだ?」

 代表するように理也が尋ねる。既に彼らの中で4人がデサフィアンテに何かをしたのは確信事項だ。めんまはデサフィアンテを敬愛すること甚だしく、一部からは狂信的親衛隊と揶揄われるほどだ。ドロフォノスとて、引退直前まで在籍していた血盟がこの世界にもあったにも関わらず、デサフィアンテの許に即座にやって来た。それくらいには彼のことを慕っている。

「フィアさんが引退する原因になった奴ら」

 吐き捨てるようにめんまは言う。

「フィアさんがリアル事情で休止してる間に、クラン乗っ取ったんだよ。【硝子の青年】は結構名前売れてたから、フィアさんの信用あったから、結構色んなツアーで歓迎されてた。それを利用するためにね」

 当時のことを思い出すだけではらわたが煮えくり返りそうだとドロフォノスは呟く。

「あれは仕方ないでしょう。絢が半年も休止してたんだもの。その間にレベルも上がって、彼らなりにやりたいこともできたのだろうし」

 2人の怒りを宥めるように夏生梨は言う。彼女とて怒りはある。否、怒りだけなら2人よりも強い。彼女はデサフィアンテがどれほど復帰し彼らと再びプレイする日を楽しみにしていたかを知っている。

「でもさ、姐御。あのときは仕方なかったじゃないか。絢は入院してたんだし」

 デサフィアンテとて休止したくてしていたわけではない。チャルラタンはそう言う。彼もまた、休止していたデサフィアンテがどういう状態だったのかを知っている。夏生梨とメールの遣り取りをしていたし、一度だけとはいえ直接見舞いにも行った。東北地方に住んでいるチャルラタンが九州まで見舞いに行くほど、デサフィアンテの病は重いものだったのだ。当然、何の病と闘っていたのかも知っている。それがどんなに辛く苦しい闘いだったのかも。

 入院という言葉に当時の血盟員は驚く。デサフィアンテも夏生梨も一言もそんなことを言ってはいなかった。恋人で同棲していた夏生梨が知っていたのは当然としても、チャルラタンも知っていたのだ。他の誰も知らなかったことを。

「病気はね、もう大丈夫なの。だから復帰したんだし」

 入院していた、しかも半年もの長い期間という事実に心配そうな表情をしているメンバーを安心させるように夏生梨は微笑む。

「差し支えなければ事情を話してはいただけませんか? 普段は穏やかな夏生梨さんとアルさんがそこまで不快感を示しているのです。余程の事情があるのではありませんか? だとしたら、絢さんに余計な心労をかけないためにも、我々で情報を共有しておいたほうが良いと思うのですが」

 穏やかな口調でバルシューンが尋ねる。それに他のメンバーも頷く。夏生梨たちの表情からデサフィアンテにとって不快な人物たちであることに違いない。

「じゃあ、俺から話します。多分、俺が一番状況判ってると思うんで」

 口を開いたのはそれまで無言だったメドヴェージだった。彼もドロフォノスに言わせれば血盟を乗っ取った者の1人だ。だから、ドロフォノスは自分に対して今でも隔意を示している。

「6年前の春くらいだったと思います。フィアさん ……いえ、敢えてプリと言います。プリがリアル事情とかで休止したんです。そのとき半年くらいの予定だって言ってました。でも、場合によっては復帰できないかもしれないとも言ってたんです」

 今考えれば闘病のためだったんですね、とメドヴェージは複雑そうな声で言った。

「ああ、そうだったな。あの時は俺がリアル忙しくて、クラン預かれなかった。後悔したよ。俺が預かっていれば ……ってね」

 苦い表情で冥き挑戦者が応じる。それ以前、デサフィアンテが海外への長期出張のために休止した際には、冥き挑戦者が箱血盟(入れ物としてのみ機能する血盟)を作って代理君主となり、そこに血盟員全てを収容した。そして半年後帰国したデサフィアンテの復帰と同時に血盟員は【硝子の青年】へと戻ったのだ。ちなみに夏生梨はデサフィアンテの方針で血盟運営には一切口を出さない立場を取っていたから代理君主とはならず、また仕事が立て込んでいたこともあってほぼ休止している状態だった。

「プリは休止が長期間で、しかも2回目、場合によってはそのまま引退も有り得るからって、クランを解散するって言ってたんです」

 メドヴェージは言葉を続ける。

 デサフィアンテは解散を告げたが、血盟員たちはこの血盟でデサフィアンテの帰りを待ちたい、だから解散はしないでほしいと言った。彼らの熱心な要請によってデサフィアンテは血盟を解散せずに休止したのである。飽くまでも彼らが待つと言ったから、残しておいてほしいと言ったからこそのことであり、デサフィアンテとしては解散するつもりだったのだ。チャルラタンはデサフィアンテがいないなら楽しくないからと、デサフィアンテが戻るまでは休止することにした。夏生梨は事情を知っているから言わずもがなだ。

 それからしばらくの間は何も起こらなかった。だが、徐々に血盟員の間に変化が現れた。そのころには冥き挑戦者はほぼINしなくなっており、ドロフォノスは居心地の悪さを感じ始めていた。

「YGってさ、クラ茶が活発だったろ? でもあれって、フィアさんが常に気を配って盛り上げてくれてたんだよな。フィアさんが休止してからはクラ茶なんて殆どなくてね。あっても狩りの誘いだけ。INやOUTの挨拶ですら御座成り」

 ドロフォノスの言葉にメドヴェージも頷く。

「絢のクランじゃ考えられないことだな」

 理也が呟き、【悠久の泉】時代の血盟員たちも同意する。

 デサフィアンテは挨拶には厳しかった。血盟規約の除名条件に『挨拶をしないこと』を入れるくらい徹底していた。そして、【悠久の泉】の血盟チャットはいつも賑やかだった。クランハントをしていようが単騎ソロだろうが、デサフィアンテは常に血盟チャットを盛り上げていた。単騎のときには血盟チャットと君主仲間のウィスパーを複数同時進行するせいでENDすることも度々あるほどだった。そうやってデサフィアンテが盛り上げてくれていたから、自然【悠久の泉】は血盟チャットが活発になり、それがINする楽しみにもなっていた。疲れて狩りをする気にはならなくても、チャットしたくてINしていたのだ。

 なのに、殆ど血盟チャットがないとなれば、『デサフィアンテの血盟』らしくない。

「クラハンに皆で行くことも減ったんです。そのくせ、身の丈に合わない上位狩場に行きたがって、よその廃クランにくっついて上位狩場に行くようになりました」

 この話を始めてから、メドヴェージはずっと口調が改まっている。普段の彼はこんな話し方をしない。しかし、これは彼にとっての懺悔でもあり、自然にそうなってしまっているのだ。

「プリは狩場のマナーにも厳しかったのに、段々マナーも悪くなっていって ……」

 ゲーム内にはそのゲーム、そのサーバーでのみ通用するローカルルールがある。大抵のサーバーやゲームで共通なのは横殴りシーフ禁止や無闇にモンスターを湧かせないことなどがある。そのローカルルールはプレイヤーたちが互いに気持ちよく狩りをして遊ぶためのものであり、狩場のマナーとして定着している。それを守らなければ他者に不快な思いをさせたり迷惑をかけたりする。そうなると、余計なトラブルを誘発する原因ともなる。【悠久の泉】が元々初心者支援血盟だったこともあって、デサフィアンテはこのマナーを守ることにも厳しかった。マナーを守らせることが血盟員を無用のトラブルから守ることだと思っていたからだ。

 しかし、シオちゃん卿たちは次第にそのマナーを無視するようになった。雑魚モンスターを湧かせておきながらそれを処理せず、ボスだけを狙う。美味しいモンスターが湧いていれば、他のパーティがいようがお構いなしにそれを叩く。そんなローカルルールを無視した狩りをするようになった。

 それに苦言を呈しても、シオちゃん卿はそれを全く聞き入れなかった。そして、『俺のやり方に文句があるなら、クランから抜ければいい』と言い放った。それを言えるのは血盟の主だけだ。血盟の主でも滅多に言わない言葉を彼は平然と吐いた。彼は【硝子の青年】の血盟主でもなく、血盟を任されたわけでもないにも関わらず。

「それでも経験値いいし、稼げるからいいかな、なんて思ってしまって。あいつらを諌めもせずに一緒にプレイしてました。フォノさんは抜けたのに」

「俺は腹が立ったんだよ。なんでお前が血盟主ヅラしてるんだって。ここはフィアさんが作ったクランだぞってな。その前の休止のとき、フィアさんは冥さんに血盟を頼むって言って休んだ。でもあのとき、フィアさんは誰にもその言葉を言わなかった。そうだよな、フィアさんは解散するつもりだったんだから。でも、俺たちが頼んだから、解散せずに残しておいてくれた」

 今まで誰にも言わなかったことをドロフォノスは言った。一度目の休止のときにはデサフィアンテは自分の代理を冥き挑戦者に依頼した。けれど二度目にはしなかった。冥き挑戦者が現実世界リアルの事情から難しいと判ると、他の誰にも血盟を頼むとは言わなかった。それは彼が血盟を任せるに足ると思う者がいなかったのだろうと今なら判る。だから、血盟は残すけれど自由に抜けていい、待っていてくれとは言わないと言ったのだ。それなのに、皆は待っていると言った。プリが戻るまで【硝子の青年】は自分たちが守っておくと。きっと、デサフィアンテはその言葉を信じていたに違いない。

 元々、ドロフォノスはソロプレイヤーだった。Lv.50近くまで血盟には所属せず、ツアーのときの一時加入(狩りJOIN)で血盟を渡り歩いていた。そんな彼が唯一『所属』したのが【硝子の青年】だった。狩りJOINして他血盟に行っても、戦争で一時離脱してもツアーや戦争が終わればすぐにデサフィアンテに連絡して【硝子の青年】に戻っていた。ソロで活動していた自分が初めて心地好い居場所だと感じたのが、自分の『ホーム』だと思ったのが【硝子の青年】だった。その【硝子の青年】が変質していくことがドロフォノスには嫌で堪らなかった。これがデサフィアンテによって齎された変化なら諦めもついただろう。けれど、その変化は自分と同じ1血盟員の傲慢によって齎された変化だった。それに耐えられず、ドロフォノスは戦争参加を口実に【硝子の青年】を抜けた。

「結局YGは悪いほうへと変わっていってしまったんです。プリが作った、楽しいクランじゃなくなってた。そして、シオちゃん卿は言いました。プリ不在じゃ新規クラン員募集もできない、狩りJOINもできない、不便すぎるって。だから、別クランを作ろうって」

 今になって思えば、そんなことは初めから想定内のことだったではないか。だから、それを理由に別血盟を立ち上げるのはおかしい。当時の自分はそれに気づかなかった。そもそも血盟に残る、箱血盟も作らないと決めたのは自分たちであって、デサフィアンテは自分たちの希望で血盟を残しておいてくれただけなのだ。

「それで俺たちはYGを抜けて新しい血盟を作りました。【硝子の青年Ⅱ】って名前で」

 本来ならば、全く新しい名前をつけるべきだった。デサフィアンテとの約束を反故にし、自分たちの都合で作る血盟なのだから、【硝子の青年】を名乗る資格はないのだ。しかし、シオちゃん卿は如何いかにも【硝子の青年】の後継血盟であるかのような名前をつけた。メドヴェージは自分たちが【硝子の青年】の血盟員だからだと思っていた。いずれデサフィアンテが復帰したときには皆で戻るのだろうと思っていた。けれど、それは違った。

 シオちゃん卿たちが求めたのは【硝子の青年】とデサフィアンテの名が持つ信用だった。ブランドとして【硝子の青年】の名前を利用しただけだった。デサフィアンテは君主仲間の信頼が厚く、交友関係も広かった。【ピルツ・ヴァルト】をはじめ大抵の血盟は『デサフィアンテの血盟員ならば』と合同クランハントを受け容れてくれていたから、その利用価値を手放したくなかったのだ。初めから彼らは【硝子の青年】に、デサフィアンテの許に戻るつもりなどなかった。

 ただ、そのころからメドヴェージのINは減っていた。新たな血盟に何かを感じたわけではない。単に通信回線の不調が酷く、ADSLから光回線に切り替えるまでの間、INを控えただけだった。否、何処かで違和感を感じていたのかもしれない。自分が求めていた血盟とは違うと感じていたのかもしれない。

 INが減ったことによって、メドヴェージは新しい血盟がいつの間にか『マナーの悪い厨集団』と認識されていることに気づかなかった。それを知ったのは、デサフィアンテが引退したあと、それまで親しくしてくれていた【ピルツ・ヴァルト】血盟員に忌避されるようになり、華水希に嫌味を言われてからのことだった。

「それから、プリが復帰して。プリは全茶で呼びかけたんです。復帰したから、Rejoin希望者は連絡くれって。でも俺たちは連絡しなかった」

 めんまはそもそも【硝子の青年Ⅱ】に移籍はしなかった。夏生梨とチャルラタンもデサフィアンテと一緒に休止していたから、そのまま【硝子の青年】にいた。ドロフォノスはすぐに連絡をしたが、ちょうど戦争に参加している時期だったこともあって再加入は見合わせた。もしシオちゃん卿たちが戻るのならば、もう戻りたくはないと思ったのだ。『今戦争にハマってるから、しばらくは戦争クランで活動する』と告げたドロフォノスに、デサフィアンテは『気が向いたら一緒に狩りに行こうぜ』としか言わなかった。ちなみにアルシェは一応【硝子の青年Ⅱ】に移りはしたが、狩りのスタイルが合わず、ほぼ休止状態だった。デサフィアンテの復帰を知るとすぐに【硝子の青年】へと戻っていた。

「プリが何も知らずにRejoin全茶するの、見てられなくて、俺、ウィスしたんです。多分皆戻らないと思うよって」

 悔いの浮かぶ表情でメドヴェージは続けた。何故あのとき自分は戻らなかったのだろう。今考えるとそれがどうしてのか判らない。

「理由は何も言いませんでした。プリも聞きませんでした。多分、何となく気づいてたんだと思います。そしたらプリから便箋が届きました。『今後Rejoinを呼びかけることはしない。クランに戻らない人は別キャラも脱退させておいてくれ』って ……」

 黙って聞いていたメンバーの表情が悲しげに歪む。デサフィアンテはいつだって血盟を大切にしていた。自分のことよりも血盟を優先させていた。きっと彼は復帰したらまた仲間とプレイできると楽しみにしていたのだろうに。

「シオちゃん卿が便箋送ってたらしいんです。『お前のことをプリだとは思わない。だから今後戻ることはしない』って」

 メドヴェージが伝えた便箋の内容に、【悠久の泉】時代からの血盟員たちの表情が怒りに染まる。どれほどデサフィアンテが『君主』としてあろうとしていたか、その努力を彼らは知っている。それを全否定するシオちゃん卿に怒りが湧いた。

「めんま、俺に殺させろ。そのシオちゃん卿って奴」

 怒りも露わな声でイスパーダが呻く。

「いや、俺が先にる」

 それを普段は温厚な疾駆する狼が止める。否、止めてはいない。彼もまたデサフィアンテに対して過保護な1人だ。

「落ち着きなさいって ……。あなたたちがそれほど怒ってくれてるだけで、絢は充分だと思うわよ。というか、チャルさんとめんまさんのおかげで絢は立ち直ってるから」

 ここまでの怒りを示してくれる仲間に嬉しくなりながらも、夏生梨は宥める。言葉にこそしてはいないが、ここにいるメンバーは皆、シオちゃん卿を敵認定しているようだ。

「絢からの便箋見てびっくりしたよ。絢らしくない、なんか投げ遣りな感じがしてさ。で、すぐに返事出したんだよね。俺はずっとお前と一緒だ、引退するときまでな、って。そしたら、絢、泣いちまってさ」

 それほど当時の彼は弱っていたのだ。病後ということも関係していただろうが。

「椎姫さんとか華さんも心配してくれてたみたいでさ。ずっとフィアさんから話、聞き出してくれてたんだ」

 そのときに初めてデサフィアンテはシオちゃん卿が厨キャラクター、迷惑キャラクターとして認識されていることを知った。そして彼女たちはデサフィアンテのために憤ってくれた。

「自分たちで好きにやりたいからクラン作るってのはいいわ。でもYGは鷹絢タカジュンが作って育てたクランの名前だもん。その名前を使うのだけは許せない。別の名前にするのが礼儀ってものじゃないの!?」

 そう言ってくれた華水希の言葉はデサフィアンテの心情を代弁してくれたものだった。それだけで充分だった。当分は彼らのキャラクターを見たくもないが、落ち着けば気にせずに済みそうだと思えた。何処までもついて行くと言ってくれためんま、引退のときまで一緒だと言ってくれたチャルラタン。そして憤ってくれる君主仲間。彼らのおかげでデサフィアンテは立ち直ったのだ。

「シオちゃん卿は、強い奴には阿って媚び諂って、弱い奴には強気になって理不尽な要求をする、まさに小物だったんだよ。狩場で無茶苦茶なマイルール押し付けてさ。フィアさんは華さんから初めてそれを聞かされたんだ。ショック受けてたよ。そして、元のクラン員たちが変わっちゃったことを悲しんでた」

 めんまはデサフィアンテの引退後、その話を華水希から聞いた。それゆえに一層、シオちゃん卿を嫌悪した。

「俺はさ、ぶっちゃけ初めからシオちゃん卿嫌いだったんだ。なんつーか勘違い野郎って感じだったから。だから、奴はどうでもいい。けど、トライゾンは許せない」

 それまではどちらかというと宥め役に回っていたチャルラタンが嫌悪感も露わに吐き捨てる。

「トライゾン、絢に言ったんだよ。半年も放置してたお前が悪いって。ちゃんと絢は最初に言ったんだぞ。半年間休止するって。なのに、何も知らないくせにそう言いやがった。あのころ、絢が死と戦ってたことも知らないくせに!!」

 穏やかではない内容に全員の目がチャルラタンに向けられる。死と戦っていたとはどういうことだと。その視線にチャルラタンは我に返る。余計なことを言ってしまったと。

「あ ……ごめん、姐御 ……」

「いいの。あのね、これを話したことは絢には内緒ね? あのころ、絢は癌の闘病中だったの。幸い早期発見できたから、時間はかかったけど大事には至らずに済んだわ。寛解してるの」

 謝るチャルラタンに微笑み、夏生梨は静かな声で告げる。勝手に話してしまったことはデサフィアンテにあとで自分が謝ろう。デサフィアンテが彼らに話すつもりがなかったことは判っているが、チャルラタンが死病だったことを言ってしまった以上、彼らとて気になってしまうはずだ。

「絢、本当にもう大丈夫なの?」

「ええ。彼から聞いたわ。定期的に検診も受けて、何の問題もないそうよ」

 不安げな理也に夏生梨は穏やかに笑う。そう、デサフィアンテは確かにそう言っていた。けれど、あのときの表情と一瞬の沈黙に夏生梨は不安を覚えている。それを隠したまま、彼女は仲間を安心させるように微笑んでいた。

「それで、結局絢は引退決めてさ。でも直後に引退したんじゃ嫌味になっちまうって気を遣って ……」

「馬鹿だなぁ ……。絢らしいよ」

 迅速が苦笑する。如何いかにも彼らしいとは思うが、自分を傷つけた相手に気を遣うことなどないのに。

「んで、心配したしい姫さんがいっそ解散してうちに来ないかって誘ってくれて。絢と姐御とめんまとアルと俺の5人でクラン移ったわけ。まぁ、その後絢の仕事が忙しくなったから、結局3ヶ月くらいで引退することになったんだ。で、保険のために絢が【悠久の泉】再創設して、俺と姐御はそっちにJOINして、一緒にやめた」

 敢えて明るい口調でチャルラタンが話を締める。

「さて、俺、ちょっと出かけてくるわ」

 ずっと不機嫌な表情で不気味な沈黙を保ったまま話を聞いていたサディークが徐に立ち上がる。彼はめんまと並ぶほどにデサフィアンテに心酔していると見られている。何しろ半分冗談とはいえ、『地獄の底まで絢について行く』と言った男だ。

「抜け駆け禁止やで、サディさん。俺かてはらわた煮えくり返ってんねん」

 やはりデサフィアンテへの敬意の強いディスキプロスも立ち上がる。

「だからやめろって」

 何をしに行くのか丸判りな2人にチャルラタンは苦笑する。そして嬉しくなる。今集っている仲間はそれほどにデサフィアンテのことを慕っているのだ。かつてよりもずっと強い絆が自分たちにはある。

「つーか、話、まだ終わってないんですけどね」

 当初より幾分明るい声でドロフォノスが言う。彼自身かなりデサフィアンテに入れ込んでいる自覚はあるが、【悠久の泉】古参のメンバーに比べればまだまだだな、などと思いながら。それが嬉しくも頼もしいと思える。

 ドロフォノスの言葉に立ち上がった2人も再度腰を下ろした。

「今までの話は前提みたいなもんでしょ。本題はここから」

 そう言ってドロフォノスは再び険しい表情になる。

「その4人、今、クラン無所属でこっちに来てるんだよ。つまり、あいつらがフィアさんに接触してくる可能性がある」

 行く当てのない4人が【悠久の泉】への加入を希望するかもしれないとドロフォノスは可能性を示す。

「そうなったら、フィアさん、加入させちゃうかもしれないっしょ。あの人、人が好いから」

 苦笑しながら言うドロフォノスにディスキプロスが大きく頷く。

「せやな。フィアさん、ホンマお人好しっつーか ……甘いっつーか、善人っつーか」

「だな。俺のこともあっさり許してたし」

 再会の瞬間から受け容れてくれていたデサフィアンテを思い出し、理也も苦笑する。

「俺、プリが何と言おうが絶対に反対します。同罪の俺を受け容れてくれたフィアさんに、これ以上辛い思いはしてほしくない」

 受け容れてもらえるなどとは思わなかった。デサフィアンテの引退後、彼がどれほど悲しんでいたか、葛藤していたかを知らされた。そして自分が選んだ相手がデサフィアンテほど信頼の置ける者ではなかったことにようやく気づいた。だから、血盟を抜けた。この世界に来て不安で堪らずにアルシェに連絡をしてしまったが、デサフィアンテは『何遠慮してんだ、さっさと来い』と言ってくれた。それがどんなに嬉しかったか。昔のことを謝った自分に『気にすんな。お互いにそれぞれの事情があって、ああなっただけなんだし。つーか、今お前に言われるまで忘れてたわー。ほら、俺トリ頭だから昔のことすぐ忘れるんだよね』と笑ってくれた。

「俺も。絶対あいつら入れたくない。っつーか、フィアさんに会わせることすらしたくない」

 ドロフォノスが同意する。メドヴェージを見る彼の目からはこれまでの蟠りが消えている。

「まぁ、それが俺らの総意だな」

 イスパーダの言葉に異を唱える者はいなかった。皆がデサフィアンテのことを君主として慕い、友人だと思っている。友人を悩ませる可能性の高い者や、傷つけて反省もしない者など仲間にしたくない。

「大丈夫ですよ。4人でしょう? 部屋が足りません。空いている2室のうち1室は確実に埋まりますから」

 穏やかな口調で告げるのはバルシューンだ。妙に確信めいた声だった。

水夏すいか君からウィスパーが入りました。こちらに来てしまっているそうです。今、絢さんから話を聞いているところらしいですが、JOIN希望だそうですよ」

「残り1室も埋まるな。俺にも暴ちゃんからウィスきた。うちに参加したいからって。パパさんがこっちにいるのも把握してるけど、EOに加入希望だってさ。絢がパパさんとこ行けって言うだろうから、一緒に説得してくれって」

 バルシューンと理也が言う。そういえば途中から2人は発言せずに左耳に手を当てていた。あれはアグアベラノと暴走剣士からのウィスパーを受けていたのだろう。アグアベラノは【自由気まま】でも一緒だった旧知の仲のバルシューンに、暴走剣士はナイトの幹部として慕っていた理也に連絡してきたらしい。

「水夏に暴ちゃんか。また賑やかになるなぁ」

 血盟内では年少組で皆に可愛がられていた2人にイスパーダは穏やかに笑う。

「暴ちゃん、来てしまったのね」

 再会できるのは嬉しいが、やはり複雑な気持ちになる。夏生梨は溜息混じりに呟いた。

「姐御、気持ちは判るけどさ。暴ちゃんだってもう成人してるよ。いつまでも子供扱いしたら、暴ちゃんも怒るよ」

 すっかり大人の声だった暴走剣士を思い、理也は苦笑する。夏生梨の気持ちは判るが、もう彼は中学生の子供ではない。

「ナイト増えたな。昔のEOみたいだ」

 昔を思い出しながら疾駆する狼が笑う。

「そうだったな。36人中30人近くはナイトだったか?」

 自分もその1人であるシャサールが思い出しながら言う。

「一番多かったころはナイトだらけだったわね。さすがに30人まではいなかったはずだけど、3分の2はナイトだったわね。おかげで苦労したわ」

 クスクスと笑いながら夏生梨が言うと、隣でチャルラタンと千珠も頷いている。前衛の要であるナイトの教育は主に夏生梨と千珠の担当だったのだ。

「癒しキャラが増えるね。暴ちゃんとアルが癒しだったからな」

 素直な暴走剣士は血盟の皆に可愛がられていた。中学生だった彼に配慮して、彼がINしている時間帯は下ネタ禁止だったりもした。皆が彼のことを弟のように思っていたのだ。

 そう迅速が明るい声で言えば、

「アルは癒しじゃなくて天然だろ」

「或いはおもちゃだな」

 アルシェいじりが最早趣味と言っても良かっためんまとドロフォノスが笑いながら応じる。

「酷いですー。私はおもちゃじゃないですよー」

 可愛らしくプリプリと怒ったふりをして言うアルシェに笑いが起こる。

 そう、この雰囲気こそが【悠久の泉】 ── デサフィアンテの血盟なのだ。それを改めて感じていた。

「さて、そろそろ絢たちも戻ってくるころね。今回はうちの関係者は暴ちゃんと水夏だけだから、楽ね」

 暗に問題の4人は絶対に受け容れない、関係者でもないと夏生梨が告げる。それに頷きながら、血盟員たちは戻ってくるデサフィアンテと、一緒に来るであろう2人のためにお茶の準備を始めたのであった。